急性膵炎
急性膵炎は、膵臓に急激な炎症が起こる病気です。みぞおちから背中にかけての強い痛み、吐き気・嘔吐、発熱などで発症することがあります。
急性膵炎は軽症で改善することもありますが、短期間で重症化し、入院治療や集中治療が必要になる場合があります。そのため、当院では急性膵炎が疑われる方に対して、診察・血液検査・腹部超音波検査などで初期評価を行い、入院治療が必要と判断される場合には、速やかに基幹病院へ紹介いたします。
強い腹痛が続く、吐いて水分が取れない、冷や汗・息苦しさ・意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、救急受診をご検討ください。
急性膵炎でみられる主な症状
急性膵炎では、以下のような症状がみられることがあります。
- みぞおちから上腹部にかけての強い痛み
- 背中に抜けるような痛み
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
- 食事や飲酒後に悪化する腹痛
- お腹の張り
- 黄疸、尿が濃い、皮膚や白目が黄色い
- 冷や汗、ぐったりする、息苦しい
特に、強い腹痛が持続する場合、嘔吐で水分が取れない場合、発熱や黄疸を伴う場合は、急性膵炎や胆石・総胆管結石などの可能性があります。早めの受診が大切です。
すぐに救急受診を検討していただきたい症状
以下のような場合は、当院の通常外来を待たず、救急外来の受診や救急要請をご検討ください。
- 我慢できないほどの強い腹痛がある
- 痛みが背中まで広がる
- 嘔吐を繰り返し、水分が取れない
- 冷や汗、ふらつき、意識がぼんやりする
- 息苦しさがある
- 高熱がある
- 皮膚や白目が黄色い
- 高齢の方、糖尿病・心臓病・腎臓病などの持病がある方
急性膵炎は、重症化すると全身管理が必要になることがあります。強い症状がある場合は、無理に様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。
急性膵炎の主な原因
急性膵炎の原因として多いのは、アルコールと胆石です。
アルコールによる急性膵炎
長期間の飲酒や多量飲酒がきっかけとなり、膵液の流れが悪くなったり、膵臓に炎症が起こったりすることで急性膵炎を発症することがあります。飲酒後に強い腹痛や吐き気が出た場合は注意が必要です。
胆石による急性膵炎
胆のうや胆管にできた石が、胆管と膵管の出口付近に詰まることで、膵液の流れが妨げられ、急性膵炎を起こすことがあります。胆石性膵炎では、黄疸や発熱、肝胆道系酵素の上昇を伴うこともあります。
その他の原因
そのほか、以下のような原因で急性膵炎が起こることがあります。
- 脂質異常症、特に中性脂肪が非常に高い場合
- 薬剤
- 膵胆道系の腫瘍
- 膵管の形態異常
- ERCPなどの処置後
- 原因がはっきりしない特発性膵炎
日本のガイドライン解説でも、急性膵炎の2大成因はアルコールと胆石で、その他に脂質異常症、外傷、自己免疫性、膵胆道系腫瘍などが挙げられています。成因ごとに治療方針が異なるため、成因診断が重要です。
当院で行う急性膵炎の初期評価
当院では、症状や経過を詳しく確認したうえで、必要に応じて以下の検査を行います。
血液検査
膵酵素、炎症反応、肝胆道系酵素、腎機能、電解質、中性脂肪などを確認します。急性膵炎では膵酵素の上昇が診断の手がかりになりますが、腹痛の原因は急性膵炎以外にも多いため、全身状態を含めて評価します。
腹部超音波検査
胆石、胆管拡張、胆のう炎、肝胆道系の異常などを確認します。胆石が原因の急性膵炎が疑われる場合、胆道系の評価が重要です。
必要に応じた画像検査・紹介
急性膵炎が疑われる場合や、重症化の可能性がある場合、CT検査や入院管理が必要になることが少なくありません。その場合は、対応可能な基幹病院へ速やかに紹介いたします。
診療ガイドラインでは、急性膵炎の診断・重症度評価・合併症・成因の精査のために画像検査が用いられ、造影ダイナミックCTは有用とされています。一方で、急性膵炎では脱水や腎機能低下を伴うこともあるため、状態を把握したうえで実施することも重要です。
急性膵炎が疑われる場合の当院での対応
急性膵炎は、外来で経過を見るだけでは不十分な場合があります。特に、強い腹痛、嘔吐、発熱、脱水、黄疸、血液検査での炎症反応高値、胆石・総胆管結石が疑われる場合などでは、入院管理や専門的治療が必要になることがあります。
当院では、急性膵炎が疑われる方に対して、以下の流れで対応します。
- 症状・飲酒歴・胆石の有無・薬剤歴などを確認
- 血液検査や腹部超音波検査で初期評価
- 急性膵炎や胆石性膵炎が疑われる場合は重症度を考慮
- 入院・CT・点滴治療・内視鏡的胆道処置などが必要と判断される場合は、基幹病院へ紹介
当院は地域の消化器内科クリニックとして、急性膵炎を疑う症状を早期に評価し、必要な場合には速やかに地域の基幹病院へつなぐ役割を担っています。
急性膵炎の治療について
急性膵炎の治療では、重症度に応じて、絶食、輸液、痛みの管理、全身状態の管理、胆石や総胆管結石に対する処置などが必要です。集中治療室での管理や、感染性合併症に対する専門的治療が必要になることも少なくありません。
当院では、急性膵炎が疑われる場合に初期評価までを行いますが、治療は厳重な管理下で入院治療が必要とされる場合が多く、原則として基幹病院へ紹介いたします。
よくある質問
急性膵炎は自然に治りますか?
軽症で改善することもありますが、急性膵炎は短期間で重症化することがあります。強い腹痛や嘔吐がある場合は、自己判断で様子を見ず、医療機関を受診してください。
急性膵炎はクリニックで治療できますか?
急性膵炎は入院治療が必要になることが多い病気です。当院では診察・血液検査・腹部超音波検査などで初期評価までを行い、原則として地域の基幹病院へ紹介します。
胆石があると急性膵炎になりますか?
胆石が胆管と膵管の出口付近に詰まることで、急性膵炎を起こすことがあります。胆石を指摘されていて、強い上腹部痛や発熱、黄疸がある場合は注意が必要です。
お酒を飲むと急性膵炎になりますか?
アルコールは急性膵炎の代表的な原因の一つです。飲酒後に強い腹痛や吐き気を繰り返す場合は、消化器内科で相談してください。
急性膵炎と胃痛は違いますか?
みぞおちの痛みとして感じるため、胃痛と区別が難しいことがあります。急性膵炎では背中に響く痛み、吐き気・嘔吐、発熱などを伴うことがあります。症状だけで判断せず、必要に応じて検査を行うことが大切です。
参考文献
この記事の執筆者
理事長・院長 永田 浩一
略歴
1996年 国立群馬大学医学部医学科卒業
1996年-2001年 東京女子医科大学 附属第二病院(現 足立医療センター) 外科
2001年-2007年 昭和大学 横浜市北部病院 消化器センター
2007年-2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科
2011年-2014年 亀田メディカルセンター 消化器科・放射線科 部長
2014年-2015年 NTT東日本伊豆病院 健診センター 特任部長
2015年-2019年 国立がん研究センター 検診研究部 検診評価研究室長
2018年4月-現在 国立がん研究センター 中央病院 検診センター (併任)
2019年4月-2026年3月 福島県立医科大学 消化器内科学講座 特任教授
資格
消化器内視鏡認定医・専門医・指導医
消化器病専門医・指導医
消化器がん検診総合認定医・消化器がん検診指導医
外科認定医・認定登録医
胃腸科専門医
難病指定医
便通マネージメントドクター
アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員
アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員
医学博士(昭和大学):学位論文
Polyethylene glycol solution (PEG) plus contrast-medium vs. PEG alone preparation for CT colonography and conventional colonoscopy in preoperative colorectal cancer staging. Int J Colorectal Dis 2007; 22: 69-76.
学会役員やジャーナルの役職など
Honorary Editors-In-Chief (International Journal of Radiology), Editorial Board Member (World Journal of Gastroenterology, World Journal of Radiology, World Journal of Gastrointestinal Endoscopyなど7英文誌)
日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
消化管先進画像診断研究会(GAIA) 代表世話人
元 日本消化器がん検診学会 代議員
日本消化器がん検診学会 大腸CT検査技師認定委員会 副委員長
日本消化器がん検診学会 編集委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 教育・研修委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 編集委員会 用語集改訂小委員会委員
日本大腸検査学会 評議員
