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大腸がん

大腸がんとは

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するもの(adenoma-carcinoma sequence、serrated pathway)と、正常な粘膜から直接発生するもの(de novo発癌)があります。

図 当院で実施した大腸カメラで見つかった大腸がん(当院の血便迅速外来を受診されました。患者様には画像使用の許可・同意を頂いております)

当院の血便迅速外来を受診された翌々日に大腸カメラを行ったところ、S状結腸に大腸がんが見つかりました。外科的治療を早急に受けていただくために、至急、然るべき基幹病院にご紹介をさせていただきました。

大腸がんは多い!?

日本人が一番かかりやすい「がん」は何でしょう?
2018年の全国がん登録罹患(りかん)データによると、日本人全体で最もかかりやすい「がん」は「大腸がん」です。女性では乳がんに次いで第2位、男性では、前立腺がん、胃がんに次いで第3位です。日本では1年間に15万人を超える方が大腸がんに罹患(大腸がんにかかること)します。世界では188万人が大腸がんに罹患し、がん種別罹患率の第3位でがんの10%を占めています。
では、命を落としやすい「がん」は何でしょうか?
2020年の人口動態統計がん死亡データによると、日本人全体で死亡原因の第1位は肺がん、次いで第2位が大腸がんです。女性では、がん死亡の原因の第1位が大腸がんです。男性では、肺がん、胃がんに次いで第3位です。日本では1年間に5万1千人を超える方々が大腸がんでお亡くなりになっています。エコパスタジアム(静岡スタジアム)の収容人員が50,889人ですから、エコパスタジアム満席分もの方が毎年大腸がんで命を落としているのです。いかに多くの方々がお亡くなりになっているのかがお分かりになるでしょう。世界では93万5千人もの人が大腸がんで死亡し、がん種別死亡率の第2位でがんの9.4%を占めています。

欧米先進国との比較
大腸がんに対する検査は日本をはじめ多くの先進国で広く実施されています。残念ながら、日本と欧米を比較すると総じて欧米の方がより大腸がん罹患率および死亡率の減少を実現しています。国別に大腸がんの罹患率や年齢調整を比較する場合、各国の年齢構成が異なるため(高齢者の比率も異なります)、病気へのかかりやすさや亡くなる率を正しく比較するために年齢調整を行います。日本は米国、英国、フランス、スイスといった国々より年齢調整罹患率も死亡率も高いのが現状です。つまり、これらの国々の人より日本人は大腸がんにかかりやすく命も落としやすいのです。日本はイタリアやベルギーに比べ、年齢調整罹患率は低いのですが、年齢調整死亡率は高い状況です。つまり、イタリアやベルギーに比べて日本人は大腸がんにかかりにくいにも関わらず、これらの国々の人よりも大腸がんで命を落としているのです。言い換えれば、イタリアやベルギーでは日本よりも大腸がんで命を落とす前に見つけて治療している(早期発見・早期治療)と言えます。

大腸がんが増加した背景

大腸がんが増加している背景には、生活習慣や食生活の変化があると言われています。動物性食品の摂取量の増加や座りがちな生活、運動習慣の不足や過剰体重の増加といった、大腸がんのリスクが日本人の生活で増加したことを反映していると考えられています。その他の危険因子として、多量のアルコール摂取、喫煙、赤肉や加工肉の摂取が挙げられています。一方で、カルシウムのサプリメントや全粒粉、食物繊維、乳製品の十分な摂取はリスクを減少させると言われています。しかし、大腸がんリスクを減らすために、生活習慣を大きく変えることは現実的には困難です。

大腸がんは治せますか?

大腸がんは、前がん病変(腺腫など)からの期間が長く、早期診断・治療が可能です。そのため、早期発見でほとんどは完治が期待でき、前がん病変であるの大腸ポリープを切除することで将来の大腸がん発生を予防できる数少ないがんです。したがって、これまでの検診で行われてきた便潜血検査だけではなく、今後、対策型検診としても大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を効果的に取り入れていくことが検討されてきています。大腸カメラ(大腸内視鏡検査)では全てのポリープを切除するクリーンコロン化を行うことで、大腸がんの死亡リスクが79%から90%低下することが出来るとされています。大腸がんは、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の介入によりその発生を減少、予防することが出来るがんです。従来、大腸がんは先進国の中では米国に多いとされてきました。米国は1985年以降、大腸がん検査を受診する率を高めてきました。その結果、大腸がん罹患率(大腸がんにかかる率)を着実に減少させています。大腸がんの危険因子を改善することよりも、大腸がん検査を受けることで早期発見、早期治療をすることが大腸がんにかかる率や死亡率を減らすために有用であることを証明しています。

大腸がんの症状

大腸がんは早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。症状としては、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などがあります。最も頻度が高い血便、下血は、痔などの良性の病気でもみられるため、そのままにしておくとがんが進行してから見つかることがあります。血便の場合、大腸がんの早期発見のために早めに消化器内科などを受診することが大切です。がんが進行すると、慢性的な出血による貧血や、腸が狭くなることによる便秘や下痢、おなかが張るなどの症状が出ることがあります。さらに進行すると腸閉塞となり、便は出なくなり、腹痛、嘔吐などの症状が出ます。大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープには自覚症状がほとんどありません。そのため、内視鏡による治療で完治が望める早期発見や将来の大腸がん予防のためには、自覚症状がない時点で大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けることが大切です。

大腸がんの早期発見のために

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は大腸がんの早期発見だけではなく、大腸がんになる前の段階のポリープ(腺腫)を見つけて治療ができる大切な検査法です。40歳以上になると大腸ポリープができやすくなりますので、大腸検査を受けたことのない方やご家族で大腸の病気をされた方がいる場合には是非お受けください。さらに、便潜血検査が陽性になる、血便が出る、便秘や下痢を繰り返す、腹痛がある、便が細くなったなどの体調の変化があった場合には、お早めに大腸カメラをお受け下さい。
当院では、大腸カメラを行う際には鎮静剤などを使用して、痛みや不安を感じることがない無痛大腸カメラ(鎮静下大腸内視鏡検査)を熟練した消化器内視鏡専門医が行っております。一方で、検査は平気でも検査の前に多量の下剤(腸管洗浄剤)を飲むのが苦手という方も少なくありません。とくに下剤特有の味が苦手という方が多いようです。そこで当院では、患者さまの好みに合わせて下剤を選択できるよう下剤を複数ご用意して、選択することができます。ただし、下剤によっては持病の有無などにより選択できない場合もありますのでご了承ください。
当院では、何度も検査をお受けいただかなくても済むように、治療が必要なポリープが見つかった際には、後日改めて切除するのではなく、見つけたその日にそのまま治療いたします。患者さまの時間的・精神的・経済的ご負担をなるべく少なくて済むよう心がけております。大腸カメラは保険診療でお受けいただけます。

当院では地元の袋井市はもちろん、静岡県西部地方の掛川市、菊川市、磐田市、森町、浜松市、御前崎市などから、多くの患者様に大腸カメラ受診目的でご来院して頂いております。ご遠方の方でも安心して大腸カメラを受けて頂けるために、検査の開始時間を午前・午後の幅広い時間帯で柔軟に対応しています。大腸カメラをご希望の方はお気軽にご相談下さい。

当院では、血便を認めた場合には迅速に対応いたします。消化器疾患において最も迅速に精密検査が必要な血便症状を認めた患者さまに対して優先的に診療・大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を行う『血便迅速外来』を実施しております。

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