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過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は腸に器質的な異常(腫瘍、ポリープ、炎症性変化など)を認めないにもかかわらず、ストレスなど生活習慣の変化が原因で、慢性的に下痢や便秘、腹痛、腹満感、あるいは腹部不快感などの症状を繰り返す機能的な腸の障害です。先進国では最も多く診断されている消化器疾患の一つであり、女性における有病率が高いとされています(2:1の比率)。日本人の7人に1人がこの疾患を有しているとされます。すべての年齢層で発症しますが、成人期初期に有病率のピークを迎え(患者さまの50%が35歳未満)、小児期に多くみられます。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の正確な原因はまだ分かっていませんが、以下のような複合的な要因が引き起こすと考えられています。
・腸管の運動障害: 腸管の筋肉が収縮し、腸管の蠕動運動を阻害する。
・内臓過敏症: 腸管の神経が過敏になる。
・脳腸管機能障害: 脳と腸の神経間の連携が悪くなる。
・腸内細菌叢の乱れ: 腸管内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増加している。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群は良性疾患ではありますが、生活の質を下げ、勉強や仕事の生産性の低下を引き起こすことから、適切な治療やケアが必要です。試験や会議の前、通勤・通学の途中で、急におなかが痛くなって、トイレに駆け込む… こんな症状がおありの方は、過敏性腸症候群かもしれません。まずは当院の消化器専門外来へご相談ください。

食事療法について

「低FODMAP(フォドマップ)食」は、過敏性腸症候群(IBS)の症状を和らげることが期待されている食事療法です。

FODMAPとは、小腸でうまく吸収されにくい「発酵性の糖類(オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)」のことで、これらが腸内で発酵すると、ガスや水分が発生し、お腹の張りや痛み、下痢などの原因になります。近年の研究では、FODMAPが腸の過敏さや腸内環境、腸のバリア機能、腸の動きにも影響する可能性が示されています。まだ全てが解明されたわけではありませんが、「お腹の張り」や「腹痛」といったIBSの症状に対する効果が、多くの研究で確認されています。

高FODMAP食品とその影響

まず、避けた方が良い「高FODMAP食品」を確認しましょう。これらには腸で分解・吸収されにくい糖質が多く含まれ、特にお腹がデリケートな方に不快な症状を引き起こしやすくなります。

  • 小麦製品(パン、パスタ、ケーキなど):フルクタンという成分が腸に負担をかける。
  • 特定のフルーツ(りんご、マンゴー、スイカ、桃など):果糖が多く、吸収されにくい。
  • 特定の野菜(キャベツ、カリフラワー、アスパラガス、キノコなど):発酵性の糖質が多く、ガスのもとに。
  • 乳製品(牛乳、ヨーグルトなど):乳糖を含み、乳糖不耐症の方には特に消化しにくい。
  • はちみつや人工甘味料(ソルビトールなど):ポリオールが腸に刺激を与えることがある。

ただし、すべての高FODMAP食品を完全に避ける必要はありません。症状が強く出る方は「量」や「頻度」を見直すだけでも改善が期待できます。

 

腸にやさしい低FODMAP食品

一方、比較的安全に食べられる「低FODMAP食品」には次のようなものがあります。

  • 特定のフルーツ:いちご、バナナ(未熟なもの)、ブルーベリーなど。
  • 特定の野菜:にんじん、きゅうり、ズッキーニ、レタスなど。
  • 乳製品の代替:アーモンドミルク、ラクトースフリーのヨーグルトなど。
  • グルテンフリー穀物:お米、キヌア、そば(グルテンフリーのもの)など。
  • たんぱく質源:豚肉、鶏肉、豆腐、魚なども基本的に低FODMAPです。
  • 飲み物:ブラックコーヒーや緑茶なども適量なら問題ありません。

日頃からお腹の不調で悩んでいる方は、これら低FODMAP食品を意識的に取り入れることで、症状がやわらぐ可能性があります。

 

食材の保存や調理の工夫も大切

低FODMAP食を実践する際には、食材の選び方だけでなく、保存方法や調理方法にも注意が必要です。

  • 冷蔵保存:新鮮な野菜や果物は冷蔵庫で保存し、できるだけ早めに食べましょう。
  • 冷凍保存:バナナやブルーベリーなどは冷凍しても栄養が保たれるので、便利です。
  • 調理の工夫:揚げ物や油の多い料理は腸に負担をかけることがあるため、オリーブオイルや塩などでシンプルに味付けするのがおすすめです。

 

注意点と始める際のポイント

低FODMAP食は過敏性腸症候群の症状緩和に有効ですが、以下の点には注意が必要です。

  • 人によって効果に差がある
  • 長期間続けると栄養バランスが偏る恐れがある
  • 便秘が悪化する場合がある
  • 摂食障害が疑われる場合は適用しない
  • 自己判断ではなく、医師や管理栄養士の指導を受けながら進めるのが理想的

低FODMAP食は、正しく取り入れることで腸の健康をサポートし、日々の生活の質を高める一助となります。
気になる症状が続く場合は、当院にご相談ください。

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