食欲不振
「このような症状はありませんか?受診を検討すべきサイン
- 1ヶ月で体重が2〜3kg以上減った
- 食欲不振だけでなく、喉のつかえ感や胃の痛みがある
- お腹がすぐにいっぱいになってしまう(早期飽満感)
- 便が黒い、あるいは血が混じる
- 全身のだるさや微熱が続いている
食欲が減ってしまう原因
食欲不振は食事をしていない、あるいは食事量が十分ではないのに、お腹が空かない状況です。食欲不振は、疲労、強いストレス、妊娠によるつわり、過度な飲酒、夏バテ、老化、あるいは虚弱体質などに伴うものから、うつ病、摂食障害、サルコペニア(老化に伴う筋肉量減少)、癌などの悪性疾患、疼痛をきたす疾患などの幅広い病気、さらには薬剤、化学療法、放射線療法などの副作用などとも関連しています。
食欲不振の原因
ストレスなど周囲の環境からの影響、老化などのほかに、精神疾患(神経性やせ症、うつ病、認知症など)、甲状腺疾患、亜鉛不足による味覚異常、消化管疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃炎、感染性胃腸炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群)、肝機能障害、腎機能障害など食欲不振の原因は多岐にわたります。内服している薬やサプリメントによって食欲不振が生じている場合もあります。食欲不振が長く続いたり、体重が減少したり、日常生活や仕事に支障をきたす場合には医療機関を受診し、食欲不振の原因を調べてもらいましょう。
食欲不振とストレスの関係
強い精神的ストレスを受けた場合に、食べ物が喉を通らないという経験は多くの方に経験があると思います。強い疲労や慢性疲労など強い肉体的ストレスを受けた場合も同様に食欲が低下します。これらのストレスは、自律神経や摂食中枢の働きを悪くすることにより食欲不振を引き起こします。胃腸は神経の分布が多い臓器ですから、ストレスによる胃腸の動きの変化は消化不良、食欲低下に密接に関係します。
胃腸は『第二の脳』とも呼ばれ、脳と自律神経を通じて密接に関わっています。強いストレスが胃腸の動きを止めてしまうこともあれば、逆に胃腸の不調が精神的な不安を増幅させることもあります。当院では消化器病専門医の視点から、この『脳腸相関』を考慮した適切なアプローチを行います。
検査で異常がないのに食欲が出ない、あるいは少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまう場合、『機能性ディスペプシア』という疾患の可能性があります。近年、治療薬の進歩で改善が期待できるようになった病気です。
食欲不振と関係性のある病気
抑うつや強い精神的ストレス、無気力などを伴う場合には精神疾患に起因している可能性があります。このような場合には、まず心療内科や精神科を受診しましょう。食欲不振に味覚異常、喉や食道のつかえる感じ、心窩部痛・腹痛、胸やけ、嘔気・嘔吐、腹部膨満感・腹満感、便秘・下痢、血便、体重減少を伴う場合は治療が必要な胃腸の病気である可能性があります。お腹が空くけれども食べるとすぐにお腹がいっぱいになるような場合には、胃腸の動きが悪い機能性疾患や、腫瘍などによる器質的疾患がある場合もあります。これらの症状に当てはまる場合、消化器専門外来を受診してください。
食欲不振は消化器疾患をはじめ病気と関連がある場合が少なくありません。一時的ではなく長期の食欲不振がある場合には医療機関の受診をおすすめします。
食欲不振の際に受ける検査
食欲不振に関連する病気がないかを調べるために、まず医師による問診および触診を行います。食欲不振により栄養状態に影響がないか、体重測定や血液検査をおこないます。血液検査により貧血、感染症の有無、栄養状態、肝機能、腎機能、甲状腺機能など全身の状態を解析します。病的な食欲不振が消化器に起因することが疑われる場合には、さらに胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)、大腸カメラ(全大腸内視鏡検査)、腹部レントゲン検査、あるいは腹部エコー(超音波検査)などを実施します。
『食欲不振の原因を調べるために内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)が必要と言われたが、怖い』と感じる方もご安心ください。当院では鎮静剤を使用し、『ウトウトと眠っている間に終わる内視鏡検査』を提供しています。不安が強い方こそ、一度ご相談ください。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)の詳しいご案内はこちらからどうぞ。
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当院で行う食欲不振の方への診察・検査・治療
検査などにより器質的疾患がないことが確認できている場合で、学校や仕事など環境によるストレスが胃腸の動きを悪くしていると診断できれば、消化管運動亢進薬、漢方薬プロバイオティクスに良い製剤を処方いたします。水分の経口摂取が困難な場合や脱水症状を認めた場合には点滴による補液を行います。
食べ物を消化する器官である胃腸の病気は食欲不振と密接に関係します。消化器専門医が必要だと判断した場合には、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)、大腸カメラ(全大腸内視鏡検査)、腹部レントゲン検査、血液検査、あるいは腹部エコー(超音波検査)などを実施します。これらの検査により機能性疾患、炎症性疾患、器質的疾患を正確に診断していきます。病気の診断とその重症度・進行度を判断することにより、患者様に一番適切な治療を迅速に行っていきます。進行した腫瘍性病変を認めた場合などでは、治療が可能な適切な基幹病院に迅速にご紹介いたします。
このような食欲不振は早めの受診をおすすめします
食欲不振が数日で改善せず続いている場合や、次のような症状を伴う場合は早めの受診をおすすめします。
体重減少、吐き気・嘔吐、みぞおちの痛み、腹痛、胸やけ、飲み込みにくさ、便秘や下痢、血便、発熱、強いだるさなどがある場合は、胃腸の病気や全身の病気が隠れていることがあります。
特に、食べられない状態が続く、脱水がある、短期間で体重が落ちている場合は、自己判断せずご相談ください。
よくある質問
Q. ストレスでも食欲不振になりますか?
A はい。強い精神的ストレスや疲労は、自律神経の乱れを通じて胃腸の動きや食欲に影響します。ただし、ストレスと思っていても別の病気が隠れていることがあるため、長引く場合は受診をおすすめします。
Q. 高齢になると食欲が落ちるのは普通ですか?
A 加齢に伴って食欲が低下しやすくなることはありますが、薬の副作用、便秘、口腔内の問題、慢性疾患などが関係していることもあります。体重減少を伴う場合は注意が必要です。
参考文献
ACG and CAG Clinical Guideline: Management of Dyspepsia (2017)
Rome IV Criteria for Functional Gastrointestinal Disorders
ESMO Clinical Practice Guidelines: Cancer cachexia in adult patients (2021)
ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics (2019/2022)
Prokinetics for functional dyspepsia (Cochrane Review, 2018)
この記事の執筆者
理事長・院長 永田 浩一
略歴
1996年 国立群馬大学医学部医学科卒業
1996年-2001年 東京女子医科大学 附属第二病院(現 足立医療センター) 外科
2001年-2007年 昭和大学 横浜市北部病院 消化器センター
2007年-2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科
2011年-2014年 亀田メディカルセンター 消化器科・放射線科 部長
2014年-2015年 NTT東日本伊豆病院 健診センター 特任部長
2015年-2019年 国立がん研究センター 検診研究部 検診評価研究室長
2018年4月-現在 国立がん研究センター 中央病院 検診センター (併任)
2019年4月-現在 福島県立医科福島県立医科大学 消化器内科学講座 特任教授(併任)
資格
消化器内視鏡認定医・専門医・指導医
消化器病専門医・指導医
消化器がん検診総合認定医・消化器がん検診指導医
外科認定医・認定登録医
胃腸科専門医
難病指定医
便通マネージメントドクター
アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員
アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員
医学博士(昭和大学):学位論文
Polyethylene glycol solution (PEG) plus contrast-medium vs. PEG alone preparation for CT colonography and conventional colonoscopy in preoperative colorectal cancer staging. Int J Colorectal Dis 2007; 22: 69-76.
学会役員やジャーナルの役職など
Honorary Editors-In-Chief (International Journal of Radiology), Editorial Board Member (World Journal of Gastroenterology, World Journal of Radiology, World Journal of Gastrointestinal Endoscopyなど7英文誌)
日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
消化管先進画像診断研究会(GAIA) 代表世話人
元 日本消化器がん検診学会 代議員
日本消化器がん検診学会 大腸CT検査技師認定委員会 副委員長
日本消化器がん検診学会 教育・研修委員会委員
日本消化器がん検診学会 編集委員会 用語集改訂小委員会委員
日本大腸検査学会 評議員
