胃がん
近年の傾向として日本における胃がんの死亡率、罹患率はともに減少傾向ですが、高齢化社会を反映して、がんのなかでは死亡数(2018年)は男性で第2位、女性で第4位、罹患数(2017年)は男性で第2位、女性で第4位です。
早期発見できれば胃がんは完治が期待できますが、進行して粘膜の外側にもがんが広がると、離れた臓器への遠隔転移やお腹の中にがん細胞が広がる腹膜播種を起こすリスクが高くなります。
胃がんの原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が最も大きなリスクファクターになっています。ピロリ菌に感染すると慢性的な胃炎を起こし、炎症が進行すると胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎を発症します。萎縮性胃炎は萎縮が進めば進むほど胃がん発症リスクが高い状態になり、さらに萎縮が進むとピロリ菌も生息できない環境になるため、ピロリ菌感染自体が自然治癒して、感染検査を行っても陰性になることがあります。
ピロリ菌は除菌治療の成功によって除去が可能です。これによって慢性炎症による萎縮性胃炎の進行を効果的に予防できます。萎縮性胃炎の進行は胃がんのリスクを上昇させますが、萎縮が進んだ場合と比較して、萎縮が進まない早い時期での除菌治療の方が、胃がんのリスクが少ないとされます。従ってピロリ菌感染が陽性と分かったら早い時期での除菌治療をおすすめしています。
早期胃がんは症状が出ないことも多く定期的な内視鏡検査が大切です。症状が起こる場合では、胸やけ、胃痛、吐き気、食欲不振などがありますが、市販薬でこうした症状が一時的に改善するため、気付かずに進行させてしまっている場合も珍しくありません。また、逆流性食道炎や胃炎、胃潰瘍を疑う症状などで受診し上部内視鏡検査を受けて、偶然に胃がん発見に至ることもよくあります。慢性的な症状がある場合には、できるだけ早くご相談ください。
当院では地元の袋井市はもちろん、静岡県西部地方の掛川市、菊川市、磐田市、森町、浜松市、御前崎市などから、多くの患者様に胃カメラ受診目的でご来院して頂いております。ご遠方の方でも安心して胃カメラを受けて頂けるために、検査の開始時間を午前・午後の幅広い時間帯で柔軟に対応しています。胃カメラをご希望の方はお気軽にご相談下さい。
ピロリ菌除菌後の胃癌
ピロリ菌の除菌により、胃がんになるリスクを大きく低減(3分の1程度)することができます。
しかしながら、胃がんになるリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌は乳幼児期に感染するため、除菌が成功するまでの長い期間(通常、数十年)、胃の粘膜細胞はピロリ菌の攻撃を受け続けています。そのため、除菌成功時には胃の粘膜細胞のDNAにすでに損傷(潜在癌)がある場合があります。
ピロリ菌除菌の成功により安心しきっては、除菌後に胃カメラを全く受けなくなるかたがいらっしゃいます。近年、ピロリ菌除菌成功後に胃癌が発見される症例が増えていることが学会で報告されています。当院でもピロリ菌保菌後の胃がんが少なからず見つかっています。
ピロリ菌の除菌が成功しても、その後、胃カメラによる定期的なフォローアップが必要です。
とくにピロリ菌により慢性胃炎(萎縮性胃炎)の程度が強い(高度萎縮の)患者様は毎年胃カメラによる定期検査を毎年受けてください。
ピロリ菌除菌後の胃は慢性炎症による修飾を受けているため、早期胃がんを見つけるためにバリウム検査ではなく胃カメラ検査をおすすめいたします。