慢性膵炎
慢性膵炎は、膵臓に長期間にわたって炎症が続き、膵臓の組織が線維化したり、膵石ができたりすることで、膵臓の働きが徐々に低下していく病気です。
初期には、みぞおちから背中にかけての痛み、食後の腹痛、吐き気などがみられることがあります。病気が進行すると、消化酵素の分泌が低下して下痢・脂肪便・体重減少が起こったり、血糖を調整する働きが低下して糖尿病を合併したりすることがあります。
慢性膵炎は、診断や治療に専門的な検査・管理が必要となることが少なくありません。当院では、慢性膵炎が疑われる症状について初期評価を行い、必要に応じて膵臓専門施設・基幹病院へ紹介いたします。慢性膵炎そのものの専門的治療は、原則として専門医療機関での診療をご案内しています。
当院での慢性膵炎への対応について
慢性膵炎は、病状によってはCT、MRI/MRCP、超音波内視鏡、内視鏡的治療、栄養管理、膵酵素補充療法、糖尿病管理など、専門的な検査・治療が必要になることがあります。
そのため、当院では慢性膵炎そのものを積極的に治療・長期管理するというよりも、以下のような対応を行っています。
- 症状や飲酒歴、急性膵炎の既往などの確認
- 血液検査による炎症反応、肝胆道系酵素、膵酵素、血糖などの確認
- 腹部超音波検査による胆石・胆管拡張・肝胆道系疾患の確認
- 胃・十二指腸・大腸など、他の消化器疾患との鑑別
- 慢性膵炎や膵腫瘍が疑われる場合の専門医療機関への紹介
慢性膵炎が強く疑われる場合、膵石、膵管狭窄、膵嚢胞、膵がんとの鑑別が必要な場合、膵臓専門施設での精密検査をご案内いたします。
慢性膵炎でみられる主な症状
慢性膵炎では、以下のような症状がみられることがあります。
- みぞおちや上腹部の痛み
- 背中に抜けるような痛み
- 食後に悪化する腹痛
- 吐き気、胃もたれのような不快感
- 下痢が続く
- 脂っぽい便、便が浮く、便が流れにくい
- 食事量が変わらないのに体重が減る
- 糖尿病の発症、または血糖コントロールの悪化
- 急性膵炎を繰り返す
慢性膵炎の症状は、胃炎、胃潰瘍、胆石症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、膵がんなどと似ていることがあります。症状だけで判断せず、必要に応じて検査を行うことが大切です。
慢性膵炎の主な原因
慢性膵炎の原因として多いのは、長期間にわたる飲酒です。大量飲酒により膵臓への炎症が繰り返されると、膵臓の組織が少しずつ壊れ、線維化や膵石を起こすことがあります。
特に男性では、アルコールが関係する慢性膵炎が多くみられます。また、喫煙も慢性膵炎の進行に関係するとされており、飲酒と喫煙の両方がある方では注意が必要です。
そのほか、以下のような原因・背景が関係することがあります。
- 急性膵炎を繰り返している
- 胆石や膵胆道系の異常がある
- 膵管の狭窄や膵石がある
- 遺伝的な要因がある
- 自己免疫性膵炎など、別の膵疾患が背景にある
- 原因がはっきりしない特発性慢性膵炎
原因によって必要な検査や治療方針が異なります。慢性膵炎が疑われる場合は、専門医療機関での精密検査が必要になることがあります。
膵がんやIPMNとの鑑別が重要です
慢性膵炎では、上腹部痛、背中の痛み、体重減少、食欲不振、糖尿病の悪化などがみられることがあります。しかし、これらの症状は膵がんや膵管内乳頭粘液性腫瘍、IPMNなどでもみられることがあります。
特に、以下のような場合は注意が必要です。
- 最近、体重が減ってきた
- 食欲が落ちている
- 背中の痛みが続く
- 糖尿病が急に悪化した
- 黄疸がある
- 健診や画像検査で膵管拡張、膵嚢胞、膵腫瘤を指摘された
- 家族に膵がんの方がいる
このような場合には、CT、MRI/MRCP、超音波内視鏡などの精密検査が必要になることがあります。当院での初期評価の結果、膵臓専門施設での検査が望ましいと判断した場合は、基幹病院へ紹介いたします。
慢性膵炎が疑われる場合の検査
慢性膵炎の診断には、症状、血液検査、画像検査、膵外分泌機能の評価などを組み合わせて判断します。
当院で行うことがある検査
当院では、症状に応じて以下のような初期評価を行います。
血液検査
膵酵素、肝胆道系酵素、炎症反応、血糖、HbA1c、栄養状態などを確認します。
腹部超音波検査
胆石、胆管拡張、肝胆道系疾患、明らかな膵腫瘤や膵管拡張の有無などを確認します。
胃カメラ・大腸カメラ
症状によっては、胃潰瘍、胃がん、大腸疾患など、腹痛・体重減少・下痢の原因となる他の病気を調べるために行うことがあります。
専門医療機関で検討される検査
慢性膵炎や膵腫瘍が疑われる場合には、以下のような検査が必要になることがあります。
- CT
- MRI/MRCP
- 超音波内視鏡、EUS
- ERCP
- 膵外分泌機能検査
- 膵がん・IPMNなどを念頭に置いた精密検査
これらの検査が必要と判断される場合は、当院から基幹病院・膵臓専門施設へ紹介いたします。
慢性膵炎の治療について
慢性膵炎の治療では、原因や病期、症状に応じて、生活習慣の改善、断酒、禁煙、食事療法、痛みの治療、膵酵素補充療法、糖尿病の治療、内視鏡的治療、外科治療などが検討されます。
膵管狭窄や膵石がある場合には、専門施設で内視鏡的治療や体外衝撃波結石破砕療法、外科治療が検討されることがあります。また、膵外分泌機能が低下している場合には、栄養状態の評価や膵酵素補充療法が必要になることがあります。
当院では、慢性膵炎の専門的治療や長期管理は原則として行っておりません。慢性膵炎が疑われる場合や、専門的治療が必要と判断される場合には、適切な医療機関へ紹介いたします。
このような方はご相談ください
以下のような症状や指摘がある方は、慢性膵炎、胆石症、胃・十二指腸疾患、膵臓疾患などの鑑別が必要になることがあります。
- みぞおちや背中の痛みが続いている
- 食後に腹痛が出やすい
- 飲酒後に腹痛を繰り返す
- 急性膵炎を起こしたことがある
- 下痢が長く続く
- 脂っぽい便が出る
- 体重が減ってきた
- 糖尿病が急に悪化した
- 健診や画像検査で膵臓の異常を指摘された
- 胆石や総胆管結石を指摘されたことがある
慢性膵炎が疑われる場合、当院で初期評価を行ったうえで、必要に応じて膵臓専門施設へ紹介いたします。
参考文献
日本消化器病学会 慢性膵炎診療ガイドライン 2021(改訂第3版)
この記事の執筆者
理事長・院長 永田 浩一
略歴
1996年 国立群馬大学医学部医学科卒業
1996年-2001年 東京女子医科大学 附属第二病院(現 足立医療センター) 外科
2001年-2007年 昭和大学 横浜市北部病院 消化器センター
2007年-2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科
2011年-2014年 亀田メディカルセンター 消化器科・放射線科 部長
2014年-2015年 NTT東日本伊豆病院 健診センター 特任部長
2015年-2019年 国立がん研究センター 検診研究部 検診評価研究室長
2018年4月-現在 国立がん研究センター 中央病院 検診センター (併任)
2019年4月-2026年3月 福島県立医科大学 消化器内科学講座 特任教授
資格
消化器内視鏡認定医・専門医・指導医
消化器病専門医・指導医
消化器がん検診総合認定医・消化器がん検診指導医
外科認定医・認定登録医
胃腸科専門医
難病指定医
便通マネージメントドクター
アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員
アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員
医学博士(昭和大学):学位論文
Polyethylene glycol solution (PEG) plus contrast-medium vs. PEG alone preparation for CT colonography and conventional colonoscopy in preoperative colorectal cancer staging. Int J Colorectal Dis 2007; 22: 69-76.
学会役員やジャーナルの役職など
Honorary Editors-In-Chief (International Journal of Radiology), Editorial Board Member (World Journal of Gastroenterology, World Journal of Radiology, World Journal of Gastrointestinal Endoscopyなど7英文誌)
日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
消化管先進画像診断研究会(GAIA) 代表世話人
元 日本消化器がん検診学会 代議員
日本消化器がん検診学会 大腸CT検査技師認定委員会 副委員長
日本消化器がん検診学会 編集委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 教育・研修委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 編集委員会 用語集改訂小委員会委員
日本大腸検査学会 評議員
