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米国がん協会が大腸がん検診ガイドラインを更新しました

[2026.05.30]

〜「受けやすい検査を選び、陽性なら大腸カメラ検査へ」という考え方〜

2026年5月、米国がん協会(American Cancer Society:ACS)が、大腸がん検診に関するガイドラインを更新しました。

今回のアップデートでは、従来から重視されてきた大腸カメラ検査や便検査に加えて、血液を用いた検査や、自宅で行う新しい便検査についても言及されました。

一見すると「大腸カメラを受けなくてもよくなるの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、今回の更新で大切なのは、大腸カメラ検査の重要性が下がったということではありません。

むしろ、
「まずは受けやすい方法で検診を受け、異常があれば大腸カメラ検査でしっかり確認する」
という考え方が、より明確に示されたといえます。

今回のブログでは、ACSの新しい大腸がん検診ガイドラインのポイントを、日本の皆さまにも分かりやすいようにご紹介します。

ACSとは?

ACSは、American Cancer Society、日本語では「米国がん協会」と呼ばれる団体です。

がんの予防、早期発見、治療支援、研究などに関する情報発信を行っており、米国ではがん検診の考え方に大きな影響を持つ団体の一つです。

今回の発表は米国のガイドラインであり、日本の大腸がん検診制度そのものが変わったという意味ではありません。

ただし、大腸がんの早期発見や予防を考えるうえで、日本の私たちにとっても参考になる内容が多く含まれています。

今回のアップデートの大きなポイント

今回のACSガイドライン更新の主なポイントは、次の3つです。

1つ目は、平均的なリスクの方では45歳から大腸がん検診を開始するという考え方が維持されたことです。

2つ目は、従来の便潜血検査や大腸カメラに加えて、自宅で行う新しい便DNA/RNA検査や、血液を用いたDNA検査など、検診の選択肢が広がったことです。

3つ目は、便検査や血液検査で陽性となった場合には、大腸カメラ検査で確認する必要があることです。

つまり、今回の更新は「大腸カメラ検査が不要になる」という話ではありません。

大腸がん検診を受けていない方に、より多くの選択肢を提示し、検診を受けるきっかけを増やすことが大きな目的と考えられます。

平均的なリスクの方は45歳から検診開始

ACSでは、大腸がんの平均的なリスクの成人に対して、45歳から大腸がん検診を始めることを推奨しています。

ここでいう「平均的なリスク」とは、たとえば以下のような方を指します。

・大腸がんや大腸ポリープの既往がない
・潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患がない
・大腸がんになりやすい遺伝性疾患がない
・近い血縁者に若年発症の大腸がんがいない

一方で、家族に大腸がんの方がいる、大腸ポリープを指摘されたことがある、炎症性腸疾患があるなどの場合は、平均的なリスクよりも注意が必要です。

このような方では、より早い年齢から検査が必要になったり、通常より短い間隔で検査が必要になったりする場合があります。

ご自身がどの程度のリスクに当てはまるか分からない場合は、医療機関で相談することをおすすめします。

便検査や血液検査など、選択肢が広がった一方で注意点もあります

今回の更新で注目されているのは、大腸がん検診の選択肢が広がった点です。

ACSは、従来の便検査や大腸カメラ検査に加えて、便の中のDNAやRNAなどを調べる検査、血液中のがん由来のDNAを調べる検査についても取り上げました。

これらは、検査を受ける方の負担を減らし、大腸がん検診を受けるきっかけを増やすという点では意味があります。

たとえば、「大腸カメラは怖い」「忙しくて検査に行けない」「便の検査なら受けられる」「採血なら受けてもよい」と感じる方にとって、検診の入口が広がる可能性があります。

一方で、日本の皆さまにお伝えする際には、いくつか注意が必要です。

まず、便の中のDNAやRNAなどを調べる検査や、血液中のがん由来のDNAを調べる検査は、日本では現時点で一般的な大腸がん検診として広く実施されている検査ではありません。

また、従来から行われている便潜血検査と比べて、費用が高額です。

さらに、「新しい検査だから従来の便潜血検査より明らかに優れている」と単純に考えることはできません。

特に血液を用いた検査については、便検査や大腸カメラ検査などの推奨される検査を受けない、または完了できない方に対する選択肢として位置づけられています。また、進行前の病変や早期の大腸がんを見つける力については、従来から確立している便検査より劣る面があることも示されています。

つまり、今回のアップデートは、
「新しい検査が登場したので、便潜血検査や大腸カメラ検査が不要になる」
という意味ではありません。

むしろ、
「大腸がん検診を受けていない人に、検診を受けてもらうための選択肢を増やす」
という意味合いが大きいと考えられます。

日本では、まず年齢に応じた便潜血検査をきちんと受けることが現実的で大切です。そして、便潜血検査で陽性になった場合や、血便・便通異常などの症状がある場合には、大腸カメラ検査で詳しく確認することが重要です。

大腸カメラ検査の重要性は変わっていません

今回のACSガイドライン更新では、新しい便検査や血液検査にも触れられていますが、これらは「大腸カメラ検査の代わりにすべてを診断できる検査」ではありません。

あくまで大腸がん検診を受ける入口の選択肢であり、陽性となった場合には大腸カメラによる確認が必要です。

大腸カメラ検査には、ほかの検査にはない大きな特徴があります。

それは、大腸の中を直接観察できることです。

便潜血検査、便中DNA・RNA検査、血液検査などは、大腸がんの可能性を調べるための検査です。一方、大腸カメラでは、実際に大腸の粘膜を観察し、がん、ポリープ、炎症、出血の原因などを確認することができます。

また、検査中にポリープが見つかった場合、条件が合えばその場で切除できることがあります。

大腸ポリープの一部は、時間をかけて大腸がんへ進行することがあります。そのため、ポリープの段階で見つけて切除することは、大腸がんの予防につながります。

大腸がんを「見つける」だけでなく、「将来のがんを予防する」という意味でも、大腸カメラには大切な役割があります。

便検査や血液検査で「陽性」と言われたら、必ず精密検査を

今回のACSガイドラインで特に重要なメッセージは、便検査や血液検査で陽性となった場合には、大腸カメラ検査で確認する必要がある、という点です。

便潜血検査で陽性になっても、必ず大腸がんがあるわけではありません。

痔、憩室、炎症、ポリープなどが原因で陽性になることもあります。

しかし、「痔だと思う」「以前も陽性だったけれど大丈夫だった」「忙しいからまた今度」と放置してしまうことは危険です。

便潜血検査が陽性ということは、便の中に血液が混じっている可能性があるということです。目に見える血便がなくても、大腸のどこかから微量の出血が起きている可能性があります。

その原因を確認するためには、大腸カメラ検査による精密検査が必要です。

また、便潜血検査で陽性になったあとに、もう一度便潜血検査を受けて陰性だったとしても、それで精密検査の代わりになるわけではありません。

一度でも陽性を指摘された場合は、自己判断せず、大腸カメラ検査による確認をおすすめします。

特に、以下のような方は早めの受診をおすすめします。

・便潜血検査で陽性になった
・血便がある
・便が細くなった
・便秘や下痢が続いている
・排便回数が急に変わった
・腹痛やお腹の張りが続いている
・体重が減ってきた
・貧血を指摘された
・ご家族に大腸がんの方がいる

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日本では40歳以上の方に便潜血検査が勧められています

ACSのガイドラインは米国のものであり、日本の大腸がん検診とは少し異なります。

日本では、大腸がん検診として便潜血検査、特に免疫法による便潜血検査が広く用いられています。

便潜血検査は、便の中に血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープがあると、病変の表面から少量の出血が起こることがあり、その血液を検出します。

検査自体は自宅で便を採取するだけなので、体への負担はほとんどありません。食事制限も基本的に不要で、多くの方が受けやすい検査です。

一方で、便潜血検査には限界もあります。

大腸がんやポリープがあっても、いつも出血しているとは限りません。そのため、便潜血検査が陰性であっても、大腸がんを完全に否定できるわけではありません。

血便、便通異常、腹痛、便が細くなった、貧血などの症状がある場合は、便潜血検査の結果が陰性であっても医療機関にご相談ください。

「新しい検査」と「よい検査」は必ずしも同じではありません

医療では、新しい検査が登場すると、「最新の検査だから、従来の検査より優れているのではないか」と考えられがちです。

しかし、検査を評価するときには、単に新しいかどうかだけでなく、いくつかの視点が必要です。

たとえば、以下のような点です。

・大腸がんをどれくらい見つけられるか
・早期がんや進行前の病変をどれくらい見つけられるか
・偽陽性や偽陰性がどの程度あるか
・検査費用はどれくらいか
・日本で一般的に受けられる検査か
・陽性になった後に、確実に大腸カメラへつながる仕組みがあるか

便中DNA・RNA検査や血液中のがん由来DNA検査は、検査の選択肢を増やすという意味では期待される面があります。

しかし、日本ではまだ一般的な大腸がん検診として広く使われているわけではなく、費用面でも課題があります。

また、従来の便潜血検査と比べて、すべての面で明らかに優れていると考えるべきではありません。

特に重要なのは、どの検査であっても「陽性となったら大腸カメラで確認する」という流れです。

検査の入口が増えることは大切ですが、最終的に精密検査につながらなければ、大腸がんの早期発見や予防には十分つながりません。

大腸がん対策で大切なのは「受けること」と「放置しないこと」

大腸がんは、日本でも患者数が多いがんの一つです。

一方で、大腸がんは早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、治療成績も良好なことが多い病気です。

また、大腸ポリープの段階で発見し、必要に応じて切除することで、将来の大腸がん予防につながる可能性があります。

そのため、大腸がん対策では、次の2つがとても重要です。

1つ目は、症状がない段階で検診を受けることです。

2つ目は、検診で異常が出たら、必ず精密検査を受けることです。

「症状がないから大丈夫」と思っている間に病気が進んでしまうことがあります。

また、「便潜血陽性だったけれど、痔だと思う」と自己判断してしまうことで、大切な精密検査の機会を逃してしまうこともあります。

今回のACSガイドライン更新は、より多くの方が大腸がん検診を受けるために、検査の選択肢を広げるという考え方を示したものです。

これは、日本の地域医療においても大切な視点です。

ただし、日本の実情を踏まえると、まずは便潜血検査を適切に受け、陽性や症状があれば大腸カメラにつなげることが、現実的で重要な大腸がん対策といえます。

当院で対応していること

永田胃腸・消化器医院では、便潜血陽性、血便、便通異常、腹痛、お腹の張り、貧血など、大腸の病気が心配な方の診療を行っています。

また、必要に応じて大腸カメラ検査を行い、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患、虚血性腸炎、大腸憩室症などの確認を行います。

大腸カメラに不安がある方も少なくありません。

当院では、できるだけ苦痛の少ない検査を目指し、鎮静剤の使用や検査前の説明にも配慮しています。検査が初めての方、不安が強い方もご相談ください。

便潜血検査で陽性になった方、血便がある方、便通の変化が続いている方は、自己判断せず、早めの受診をおすすめします。

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まとめ

米国がん協会は、2026年に大腸がん検診ガイドラインを更新し、便検査や血液検査などの選択肢を広げました。

今回のポイントは、「大腸カメラの代わりになる検査が増えた」というよりも、「より多くの人が検診を受けるきっかけを増やす」という点にあります。

便の中のDNAやRNAなどを調べる検査、血液中のがん由来のDNAを調べる検査は、新しい選択肢として注目されています。

しかし、日本では一般的な大腸がん検診として広く実施されているわけではなく、費用が高額になる可能性があります。また、従来の便潜血検査と比べて、すべての面で明らかに優れているわけではありません。

大切なのは、検査の種類にかかわらず、異常が出た場合には大腸カメラで詳しく確認することです。

日本では、大腸がん検診として便潜血検査が広く行われています。検診で異常を指摘された方、血便や便通異常がある方は、「そのうち」ではなく、早めに医療機関へご相談ください。

大腸がんは、早期発見と予防がとても大切な病気です。
地域の皆さまの健康を守るために、当院でも分かりやすい情報発信と、丁寧な診療を心がけてまいります。

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