腸管型ベーチェット病
腸管型ベーチェット病とは
腸管型ベーチェット病は、ベーチェット病の消化器型で、主に回盲部(小腸末端と大腸の接続部)に潰瘍を形成する慢性炎症性疾患です。全身性の自己炎症疾患であるベーチェット病の中でも、腸管型は5〜10%にみられ、特に東アジア(
腸管型ベーチェット病は、再燃と寛解を繰り返すため、病状の経過観察が重要であり、進行すると腸閉塞や穿孔を引き起こす可能性があります。
腸管型ベーチェット病の症状
主な症状は以下の通りです。
- 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐
- 消化管出血や下血
- 腸穿孔、腸閉塞(重症例)
これらの症状はクローン病や腸結核など他の消化器疾患と類似しており、診断が難渋することもあります。
腸管型ベーチェット病の原因
明確な原因はいまだされていませんが、以下の要素が関与していると考えられています
遺伝的要因
HLA-B51、IL23R/IL12RB2などの遺伝子多型
免疫異常
自然免疫と獲得免疫の制御異常
感染因子
ヘルペスウイルスや口腔内細菌(Streptococcus mutans)
腸内細菌叢の乱れ
これらの要因が複合的に働き、血管炎を中心とする全身性の炎症が発生すると報告されています。
腸管型ベーチェット病の検査・診断
腸管型ベーチェット病は、大腸カメラ検査で深掘れのある円形潰瘍の確認することが診断の鍵となります。円形潰瘍を認めたら病理組織学的検査にて潰瘍組織の評価を行います。
また、血液検査(CRP、ESR、IL-6、フェリチン、プロカルシトニン、カルプロテクチンなどの炎症マーカー)も実施します。
その他の下記の検査が必要な場合に基幹病院にご紹介いたします。
カプセル内視鏡
小腸病変の確認に有用
CT・MRI
腸壁肥厚や周囲炎症の評価
腸管型ベーチェット病の診断基準
腸管型ベーチェット病の診断は、以下のように行います。
ベーチェット病の診断基準
主症状
口腔内アフタ、外陰部潰瘍、眼病変、皮膚病変
副症状
関節炎、血管炎、神経症状、消化器病変
完全型ベーチェット病
4つの主症状のすべてが出現している状態です。
不完全型ベーチェット病
以下のいずれかの場合、「不全型ベーチェット病」と診断されます。
- 主症状が3つ出現している場合
- 主症状が2つと副症状が2つ出現している場合
- 眼の症状と主症状1つが出現している場合
- 副症状が2つ出現している場合
特徴的な腸管病変の確認
- 回盲部を中心とした深掘れ潰瘍
- 円形または類円形で、周囲は比較的正常粘膜
腸管型ベーチェット病の治療法
薬物治療
重症度に応じて治療が選択されます
- 軽症例:5-アミノサリチル酸(5-ASA)
- 中〜重症例:副腎皮質ステロイド、免疫調整剤(チオプリン製剤など)
- 難治性例
抗TNF-α抗体、JAK阻害薬、カルシニューリン阻害剤など。腸穿孔、大量出血、腸閉塞などの症状と認め、薬物療法の効果が見られない場合には外科的処置のできる基幹病院の受診が必要です。
腸管型ベーチェット病 Q&A
Q. ベーチェット病は人から人にうつりますか?
A. いいえ。ベーチェット病は感染症ではなく、自己免疫系の異常が関与する非感染性の炎症性疾患です。他人に感染することはありません。
Q. ベーチェット病になると疲れやすくなりますか?
A. はい。慢性的な炎症、貧血、栄養不良、また薬物治療による副作用などにより、疲労感を訴える患者さんは少なくありません。
Q. ベーチェット病はストレスと関係ありますか?
A. 明確な因果関係はありませんが、ストレスが再燃や症状悪化の引き金になる可能性はあります。ストレス管理も治療の一環として重要です。
