脂肪性肝疾患(脂肪肝・MASLD/MASH)
健診で「脂肪肝」や「肝機能異常」を指摘された方へ
健康診断や人間ドックで「脂肪肝」「肝機能異常」「ALT高値」「γ-GTP高値」と指摘されても、自覚症状がないため、そのまま様子を見てしまう方は少なくありません。
しかし脂肪肝は、単に肝臓に脂肪がついているだけの状態ではなく、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病と深く関係する病気です。近年は、従来のNAFLD/NASHに代わり、MASLD/MASHという新しい考え方で評価されるようになっています。
当院では、消化器病専門医が、採血、FIB-4 index、腹部エコー、超音波エラストグラフィーを組み合わせ、肝臓の線維化リスクや将来の合併症リスクを、できるだけ体に負担の少ない方法で評価します。
健診で脂肪肝を指摘された方、肝機能異常が続いている方、糖尿病・脂質異常症・高血圧を合併している方は、一度ご相談ください。
このような方は一度ご相談ください
- 健診で「脂肪肝」と指摘された
- AST、ALT、γ-GTP、血小板数などに異常がある
- 腹部エコーで肝臓が白い、脂肪肝疑いと言われた
- 糖尿病、境界型糖尿病、脂質異常症、高血圧がある
- BMIが高い、または腹囲が増えてきた
- お酒は多くないのに肝機能異常が続いている
- 家族に肝硬変、肝がん、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中の方がいる
- 以前から脂肪肝と言われているが、詳しい検査を受けたことがない
世界的なパラダイムシフト:NAFLDから「MASLD / MASH」へ
2023年、米国肝臓学会(AASLD)や欧州肝臓学会(EASL)をはじめとする世界各国の主要学会(日本肝臓学会含む)による国際的なコンセンサスにより、従来の「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)」という名称は、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:マッスルディー)」および「代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH:マッシュ)」へと刷新されました。
これは単なる名前の変更ではありません。「お酒を飲まないこと」を前提とする消極的な定義から、「肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などの『代謝異常(Metabolic dysfunction)』が原因で肝臓に脂肪が沈着し、進行する全身性疾患である」という、病態の本質を突いた積極的な定義への転換です。
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MASLD(旧NAFLD):肝細胞の5%以上に脂肪沈着を認め、かつ少なくとも1つの代謝危険因子(肥満、高血糖、高血圧、中性脂肪高値など)を有する状態。
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MASH(旧NASH):MASHは、MASLDの中でも肝臓に炎症や線維化が加わった状態です。すべての方が肝硬変や肝がんへ進行するわけではありませんが、線維化が進むほど将来の肝硬変・肝がん・心血管疾患のリスクが高くなるため、早い段階でリスクを評価することが大切です。
「AST・ALTが正常=安心」という誤解
健康診断において最も根深い誤解が、「血液検査でAST(GOT)やALT(GPT)の数値が正常範囲内だから、脂肪肝があってもまだ大丈夫」という自己判断です。
AST・ALTが正常範囲内でも、脂肪肝や肝線維化が隠れていることがあります。特に、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧を合併している方では、血液検査の数値だけで判断せず、FIB-4 indexや腹部エコー、必要に応じてエラストグラフィーで肝臓の状態を確認することが重要です。
したがって、健診結果で「肝機能の数値はA判定(あるいは軽度上昇)」であっても、腹部エコーで「脂肪肝」と書かれていたら、専門医による評価が大切です。
肝がんと全身の血管障害
複数の疫学研究では、脂肪肝がある方では、肝細胞がん、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患などのリスクが高いことが報告されています。
そのため脂肪肝は、肝臓だけでなく、血糖、脂質、血圧、体重などを含めて総合的に評価することが大切です。
さらに重要なのは、脂肪肝患者様における長期的な死因の第1位は、実は肝不全や肝がんだけではないという点です。国内外のガイドライン(AASLD/EASL)でも強力に警告されている通り、脂肪肝患者様の主要な死因および合併症は「心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患」です。 肝臓に脂肪が蓄積するプロセスは、全身の血管が傷つき、動脈硬化が加速度的に進行している状態と完全に同期しています。肝臓を治療することは、あなたの命(心臓や脳の血管)を守ることに直結しているのです。
当院の対応:日米欧ガイドライン準拠の「非侵襲的リスク層別化」
最新の国際ガイドラインでは、すべての脂肪肝患者様に対して、いきなり肝臓に針を刺すような負担の大きい検査(肝生検)を行うのではなく、採血データ等を用いた「非侵襲的検査(NIT: Non-Invasive Tests)」によるリスク層別化を最初に行うことが推奨されています。
当院では、この世界標準のプロトコルを完全に導入し、以下のステップで精密な評価を行います。
ステップ1:FIB-4 index(フィブフォー・インデックス)による線維化リスクの算出
日々の採血データ(年齢、AST、ALT、血小板数)から計算式を用いて、肝臓の「線維化(硬さ)」のステージを的確に予測します。
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FIB-4 < 1.3 【低リスク群】:高度な肝線維化の可能性は低いと考えられます。生活習慣の見直しを行いながら、定期的に採血やエコーで経過を確認します。
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FIB-4 1.3 〜 2.67 【中間リスク群】:線維化が始まっている可能性を否定できない、最も注意が必要なゾーンです。専門医によるさらに一歩進んだ詳細な評価が必要です。
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FIB-4 > 2.67 【高リスク群】:高度な肝線維化の可能性があるため、肝硬変や肝がんのリスク評価を含めた詳しい検査が必要です。必要に応じて、地域の専門医療機関とも連携します。
ステップ2:最新の「超音波エラストグラフィー」による肝硬度(ガチガチ度)の精密測定
当院では、腹部エコーに加えて、超音波エラストグラフィーを用いた肝硬度測定を行っています。
エラストグラフィーは、超音波を用いて肝臓の硬さを数値で評価する検査です。肝生検のように針を刺す検査ではなく、通常のエコー検査に近い感覚で受けていただけます。
FIB-4 indexで中間リスク以上と判断される方や、糖尿病・肥満・脂質異常症などを合併している方では、エラストグラフィーを組み合わせることで、肝線維化のリスクをより詳しく評価します。
ガイドラインが推奨する「2ステップ戦略」 採血による「FIB-4 index(ステップ1)」でリスクが否定しきれない中間リスク群以上の患者様に対して、この「超音波エラストグラフィー(ステップ2)」を組み合わせることで、見落としのない極めて精密なリスク層別化が可能となります。当院ではこの世界水準のプロトコルに則り、一人ひとりの肝臓の正確なステージを見極めます。
最新の薬物治療トレンドと「糖尿病専門医」とのスムーズな連携
糖尿病や肥満症を合併している方では、肝臓の評価だけでなく、血糖管理や体重管理を含めた総合的な治療が重要です。
近年、糖尿病や肥満症の治療薬の中には、体重管理や代謝改善を通じて脂肪肝の改善が期待される薬剤もあります。ただし、薬の適応や安全性は患者さんごとに異なるため、専門的な判断が必要です。
当院では、肝臓の線維化評価、腹部エコーによる肝臓・胆のう・膵臓などの確認、肝がんリスクの評価を行います。糖尿病や肥満症に対する専門的な治療が必要と判断される場合には、糖尿病専門医と連携し、患者さんに合った治療方針を検討します。
▼ 消化器・肝臓の専門医と、糖尿病の専門医による連携 当院が「エラストグラフィーやエコーによる肝臓の線維化評価と、肝がん・消化器がんのスクリーニング」を担い、いわせ医院(糖尿病内科)が「最新のエビデンスに基づく最適な血糖コントロールと体重管理」を担う。 それぞれの領域の専門家が連携することで、患者様の肝臓と全身の血管を守る安心の医療を提供いたします。
関連リンク:専門医同士の特別対談 当院といわせ医院・岩瀬宗司先生との連携の想いや、糖尿病治療と消化器疾患の深い関わりについては、下記の特別対談記事にて詳しくお話ししています。ぜひご覧ください。
【特別対談】糖尿病治療と消化器内視鏡の専門クリニックによる連携について
当院で行う主な検査
1. 採血検査
AST、ALT、γ-GTP、血小板数、血糖、HbA1c、脂質、肝炎ウイルスなどを確認します。脂肪肝以外の肝疾患が隠れていないかもあわせて評価します。
2. FIB-4 index
年齢、AST、ALT、血小板数から、肝臓の線維化リスクを推定します。高度な線維化を見逃さないための入口となる検査です。
3. 腹部エコー検査
肝臓への脂肪沈着、肝臓の形、脾腫、腹水、肝腫瘍の有無などを確認します。
4. 超音波エラストグラフィー
肝臓の硬さを数値で評価する検査です。肝生検のように針を刺す検査ではなく、通常のエコー検査に近い感覚で受けていただけます。
脂肪肝の治療で大切なこと
脂肪肝の治療の基本は、生活習慣の見直しです。特に、体重、血糖、脂質、血圧を総合的に管理することが重要です。
体重が増えている方では、まず現在の体重の3〜5%程度の減量を目標にし、肝臓の脂肪を減らすことを目指します。MASHや線維化が疑われる場合には、よりしっかりとした体重管理が必要になることがあります。
食事では、甘い飲み物、間食、夜遅い食事、過剰な炭水化物や脂質を見直します。運動は、ウォーキングなどの有酸素運動に加え、可能であれば筋力トレーニングを組み合わせることが有用です。
糖尿病、脂質異常症、高血圧がある場合は、それぞれの病気を適切に治療することが、肝臓だけでなく心筋梗塞や脳卒中の予防にもつながります。
永田胃腸・消化器医院が選ばれる理由
糖尿病や肥満症を合併している方では、肝臓の評価だけでなく、血糖管理や体重管理を含めた総合的な治療が重要です。
当院では、肝臓の線維化評価、腹部エコーによる肝臓・胆のう・膵臓などの確認、肝がんリスクの評価を行います。糖尿病や肥満症に対する専門的な治療が必要と判断される場合には、糖尿病専門医と連携し、患者さんに合った治療方針を検討します。
2. 「数値の盲点」を見逃さない非侵襲的リスク評価(エラストグラフィー)
「採血のALTが正常だから大丈夫」というの盲点を見逃しません。当院ではFIB-4インデックスによる精密なリスク評価に加え、最新の「超音波エラストグラフィー」を導入。体に針を刺すことなく、痛みもないエコー検査で、肝臓の線維化(ガチガチ度)や脂肪の蓄積割合を正確に数値化し、将来の肝がんリスクを的確に見極めます。
3. 糖尿病専門医「いわせ医院」との連携体制
脂肪肝(MASLD/MASH)を根本から改善するには、背景にある代謝異常へのアプローチが不可欠です。当院では、高度なインクレチン関連薬(GLP-1/GIP等)を用いた最先端の糖尿病・肥満治療が必要な場合、即座に糖尿病専門医である「いわせ医院(岩瀬 宗司 先生)」へとご紹介し、緊密な共同診療を行う体制を構築しています。消化器病専門医と、糖尿病の専門医による連携で患者様をサポートします。
4. 心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)を防ぐ包括的アプローチ
脂肪肝は、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満などと関連し、心血管疾患のリスクとも関係することが知られています。
そのため当院では、肝臓の評価だけでなく、血糖、脂質、血圧、体重なども含めて確認し、必要に応じて循環器専門医と連携しながら、全身の健康管理をサポートします。
よくある質問
Q. 脂肪肝は治りますか?
A. 生活習慣の改善により、肝臓の脂肪が減り、検査値やエコー所見が改善することがあります。ただし、肝線維化が進んでいる場合は、定期的な評価が必要です。
Q. お酒を飲まなくても脂肪肝になりますか?
A. はい。肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などが関係する脂肪肝があります。現在はMASLDという考え方で評価されます。
Q. AST・ALTが正常なら大丈夫ですか?
A. 正常範囲内でも脂肪肝や肝線維化が隠れていることがあります。腹部エコーで脂肪肝を指摘された方や、糖尿病・肥満・脂質異常症がある方は、一度評価をおすすめします。
Q. 脂肪肝で肝がんになりますか?
A. すべての脂肪肝が肝がんになるわけではありません。ただし、MASHや肝線維化が進んだ方では、肝硬変や肝がんのリスクが高くなるため、リスク評価と経過観察が重要です。
Q. どのような検査を受けますか?
A. 採血、FIB-4 index、腹部エコー、必要に応じて超音波エラストグラフィーで肝臓の脂肪や硬さを評価します。
参考文献
日本肝臓学会 編:「脂肪肝(NAFLD/NASH)診療ガイドライン」
この記事の執筆者
理事長・院長 永田 浩一
略歴
1996年 国立群馬大学医学部医学科卒業
1996年-2001年 東京女子医科大学 附属第二病院(現 足立医療センター) 外科
2001年-2007年 昭和大学 横浜市北部病院 消化器センター
2007年-2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科
2011年-2014年 亀田メディカルセンター 消化器科・放射線科 部長
2014年-2015年 NTT東日本伊豆病院 健診センター 特任部長
2015年-2019年 国立がん研究センター 検診研究部 検診評価研究室長
2018年4月-現在 国立がん研究センター 中央病院 検診センター (併任)
2019年4月-2026年3月 福島県立医科大学 消化器内科学講座 特任教授
資格
消化器内視鏡認定医・専門医・指導医
消化器病専門医・指導医
消化器がん検診総合認定医・消化器がん検診指導医
外科認定医・認定登録医
胃腸科専門医
難病指定医
便通マネージメントドクター
アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員
アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員
医学博士(昭和大学):学位論文
Polyethylene glycol solution (PEG) plus contrast-medium vs. PEG alone preparation for CT colonography and conventional colonoscopy in preoperative colorectal cancer staging. Int J Colorectal Dis 2007; 22: 69-76.
学会役員やジャーナルの役職など
Honorary Editors-In-Chief (International Journal of Radiology), Editorial Board Member (World Journal of Gastroenterology, World Journal of Radiology, World Journal of Gastrointestinal Endoscopyなど7英文誌)
日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
消化管先進画像診断研究会(GAIA) 代表世話人
元 日本消化器がん検診学会 代議員
日本消化器がん検診学会 大腸CT検査技師認定委員会 副委員長
日本消化器がん検診学会 編集委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 教育・研修委員会委員
元 日本消化器がん検診学会 編集委員会 用語集改訂小委員会委員
日本大腸検査学会 評議員
