【永田胃腸・消化器医院×すみれ薬局対談】大腸内視鏡検査の前処置について 検査食と下剤服用の重要性
本日は、永田胃腸消化器内科様とすみれ薬局様の対談ということで、永田院長と桑原様にお越しいただきました。本日はありがとうございます。
- 永田院長: よろしくお願いいたします。(左)
- 桑原薬剤師: よろしくお願いいたします。(右)
『永田胃腸・消化器医院』と『すみれ薬局』のご紹介をお願いします。
- 永田胃腸・消化器医院は消化器に特化しており、内視鏡検査・治療を多く行っています。内視鏡は月に約300件以上行っており、遠方の市町村からも多くの患者さんにお越しいただいております。 若い方の潰瘍性大腸炎や、中高年の方の大腸ポリープ、大腸癌、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症に関連する疾患が多いのが特徴です。
- すみれ薬局は、1999年9月に開局して以来、25年以上、永田胃腸・消化器医院様をご利用いただいた患者様を中心に、幅広く地域の患者さんにご利用いただいております。 永田胃腸・消化器医院様が消化器疾患に特化されているため、今日に至るまで消化器疾患の患者様のサポート実績を多く積ませていただいております。
それでは、今回の対談の企画の意図を永田院長にご説明いただけますでしょうか。
- 本日は当院が消化器に特化しており、内視鏡検査が多いことから、その点について桑原薬剤師さんと対談したいと思っております。 内視鏡検査では検査の質を高めることが大切であり、 検査の質を高める一つの要素が、腸の中をいかに綺麗にできるかという点です。この点について、いつもすみれ薬局の薬剤師さん、スタッフの方に絶大なご協力をいただいていますので、こうした点について中心にお話ししたいと思っています。
腸の中を綺麗にするには検査食と下剤が必要かと思います。まずは検査食の必要性について薬剤師の観点からご説明いただけますでしょうか。
- 検査食は、検査を受ける方が食べても検査の妨げにならないように、残渣(腸の中の残り)が残らないように作られた専用の食事です。 これで検査前日の食事を済ませることで、より確実に腸の中がきれいになります。先生からお話があったように、残渣がないほど(腸の中が綺麗なほど)検査の精度が向上しますので、検査の精度を高めるのに貢献してくれる食事になります。残渣が残ってしまうと、洗い流しながらの検査になり、時間がかかります。しかし、検査食によって洗い流しがなくなることで、検査にかかる時間も短縮され、患者様のご負担もより少なくなります。
検査食の説明の際にどのようにされていますか?また患者さんから良くある質問はどのようなものでしょうか。
- 「検査前には繊維質の少ないものなどの消化の良いものを召し上がってください」と説明するのですが、具体的に何を食べればいいのかイメージできないということがあります。 そのイメージの難しさを簡単にするものが検査食です。 ですが、どう食べたらいいのか、味は変ではないのか、アレルギーがある場合はどうしたらいいのかなど患者さんが感じている疑問点に全て答えることは難しいので、すみれ薬局さまにご協力いただいています。
- 基本的に検査食を召し上がっていただくのは、検査の前日のみとなっております。 それまでは原則、普通の食事でも問題ありません。個別に2日以上前から注意が必要な方もいらっしゃいますが、大体の方は検査前日だけで大丈夫です。当薬局でお取り扱いさせていただいているものは、大手の食品メーカーさんの製品ばかりです。実際に食べてみたのですが、日頃食べるレトルト食品とそんなに大差ないと感じています。 完全に調理済みのタイプなので、電子レンジなどで温めなくても食べられます。 前日のお昼など、仕事で忙しい方でも、職場に持って行ってそのまま食べられるのが特長です。食べる前に心配される方も結構いらっしゃいますが、食べてみたらむしろ気に入っていただいて、消化のいい食事として検査後もご購入される方もたまにいらっしゃいます。また、食品アレルギーのある方から、「アレルギーがあるけど大丈夫か」というお話をいただくことがあります。 アレルギーに関しては、初めてご来局いただいた時の聞き取りで食品アレルギーについてもご質問させていただいております。 その情報がある方には、該当するものがないか確認してからお渡ししています。 ただ、最初の来局からしばらく経っている方や、新たにアレルギーが見つかった方、あるいはその時言うのを忘れた、という方もいらっしゃると思います。 そういう方は、いらっしゃった時にご相談いただければ、それも踏まえて確認してお渡しさせていただきます。
もしアレルギーがあった場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか?
- アレルギーについても患者さんごとに差があります。例えば特定の食材にアレルギーがあるが、生だけがダメで火を通せば大丈夫、といったところまでもう一度細かく聞き取りさせていただいています。細かい聞き取りの上で、ご用意している検査食の中から該当しないものをお渡しするという形になります。どうしても該当するアレルギー物質がどの検査食にも入ってしまっている場合だけは、検査食なしでお食事の注意事項という形でさらに詳しく説明させていただいています。
次に腸の中を綺麗にするための下剤について医師の観点からご説明いただけますでしょうか。
- 大腸カメラの前には、大腸の中を空っぽにしなければいけません。 通常、下剤でイメージされるのは、『便秘の方が飲む便通を良くする薬』ですが、その方法は腸管を刺激したり、便の中の水分を増やしたりと多岐にわたります。 そうした下剤に加え、腸管そのものを洗浄する腸管洗浄剤があります。 下剤は補助的な形で、前日あるいは便秘の状態によっては3日、1週間前から患者さんに合わせてお出しします。 そして、便通を良くした状態で、検査当日に腸管洗浄剤を、薬剤によりますが、大体2,000cc前後の水分あるいは腸管洗浄剤を飲んでいただく、ということを行うのが、大腸カメラ前の腸管前処置になります。
永田胃腸・消化器医院・すみれ薬局で処方されている下剤の特徴について詳しく教えていただけますでしょうか。
- 主に処方しているお薬はマグコロール散とモビプレップ、そしてビジクリアの3点です。マグコロールとモビプレップは液体のお薬です。 それぞれ特徴がありますが、ポリ袋に粉が入っていて、これを水で溶かして飲んでいただくタイプです。
マグコロール
作ったお薬を単純にひたすら飲んでいただくタイプです。ご自宅にあるコップで取りながら、1時間前後、最大2時間以内に全部飲んでください、とお伝えしています。 味は、薄めのスポーツドリンクのような味なので、スポーツドリンクが嫌いでなければ比較的飲みやすいかと思います。
モビプレップ
お薬の効き方により、ゆっくり飲んでいただく必要があります。 飲む時に使う専用の紙コップをご用意しており、コップ1杯を10分から15分かけて飲んでください、という形でお渡ししています。 お薬を2杯飲んだ後、お水を1杯飲む、というサイクルを3周行って必要な量を服用するようになっています。 飲んだ回数のチェック表もご用意しています。 作ったお薬が残る場合がありますが、表が終わった時点で捨ててくださいと説明しています。 味は、薬の特性上あえて好みが分かれる味に作られているそうです。実際に飲んだ方の言葉を借りると、薄い梅ジュースのような味、と表現されていました。
ビジクリア
錠剤のお薬です。 全部で50錠あり、これを5錠を水分200mlで15分以内に服用するサイクルを10周行います。 この時、使える水分がお水だけでなく緑茶と紅茶も大丈夫なのが大きな特徴です。 好きな飲み物の味で飲んでいただけるので、味の問題は比較的クリアできます。 ただし、錠剤が大きいので、飲み込む力が必要という点はご注意いただきたいところです。
どの洗浄剤もかなりの水分を服用しなければいけないのですね。患者さんからよくあるお悩みやご不安としては、量が多いことや味のことでしょうか。
- 量が多いことや味に関するご不安はよくあります。よくある質問としては、どれくらいからお手洗いに行きたくなるか、というお話をいただくことが結構あります。 これはあくまで平均ですが、マグコロールは約2.6時間、モビプレップは約50分、ビジクリアは約1.5時間と言われています。 ただし、かなり個人差が出るため、患者様には「できるだけ早く飲み始めてくださいね」とお伝えしております。
永田胃腸・消化器医院とすみれ薬局の特長としてマグコロール、ビジクリア、モビプレップの3種類から選べるとのことですが、患者さんの好みや状態に応じて、いつ、どの段階で選べるのでしょうか?
- 当院では表でそれぞれの特徴を提示して、患者さんに選んでもらう形をとっています。
例えば、冬場だと女性や高齢の方は体が冷えやすいので、温かい紅茶などで飲める錠剤のビジクリアがお勧めです。 一方、錠剤を飲むのが苦手で味を重視する方にはマグコロールが良いかもしれません。 あるいは、便秘がちな人には強力な洗浄効果のあるモビプレップが良い、といったように、患者さんの好みや状態を判断してお勧めしています。 これは、薬局さんに行く前の、大腸カメラの同意という段階で決めさせていただいています。
内視鏡を実施するドクターとして、特にお勧めの腸管洗浄液はどれでしょうか?
- 腸管洗浄剤の種類は上記以外にもまだたくさんありますが、その中からお勧めの3つを選んでいますので、この3つであれば自信を持って勧められます。 あとは患者様の好みや便通の状態によって選ぶという形ですね。 この3つなら皆さん安心して検査の質を高くできるかと思います。
腸管洗浄液も薬の一つですので、服用時の副作用や脱水などが患者さんの懸念点かと思います。この点に関して薬剤師の観点からはいかがでしょうか。
- 主な副作用としては、気持ち悪くなって吐いてしまったり、お腹がひどく痛くなってしまったり、というのがあります。 もう少し重篤な副作用としては、低ナトリウム血症というものがあり、痙攣を起こしたり意識がなくなったり、ということが添付文書には書いてあります。副作用を避けるためには、『「これ以上飲めない」と感じるほど気持ち悪くなってしまったり、お腹が痛くなってしまったりしたら、我慢しすぎずにクリニックまで相談してください』とお伝えさせていただいています。
- 辛くなったら、吐き気や腹痛、あるいは飲み方が分からないといった場合には、すぐにお電話いただくようにしておりますし、実際お電話もいただいています。そこで看護師が対応し、必要に応じて医師も相談に乗らせていただいています。 必要であれば、すぐに医院に来ていただいて、場合によっては医院での服用をお願いしています。
- 注意点としましては、先ほど挙げた3つのうち、マグコロールとビジクリアに関しては、腎機能が低下している方だとご利用いただけないので、腎機能が低下しているのが分かっている方は、申し訳ないですがモビプレップをお選びくださいとお伝えしています。お薬の飲み方自体で脱水を避けられるようには作られているのですが、「ここはお水を飲んでね」と言われたら、できるだけしっかり飲むようにしてください。
次に、医師と薬剤師の連携についてお話しさせていただければと思います。まず永田院長、永田胃腸・消化器医院とすみれ薬局様の連携について紹介いただけますでしょうか?
- はい。医院から処方された薬が、その患者様に飲み合わせに問題がないか、複数医療機関を受診されている患者さんもいますので、そうした問題がないか、あるいは薬がきちんと実際に飲めているか、出された薬を理解しているか、といった重要な情報を、すみれ薬局の薬剤師さんがきちんと把握していただいています。 そして、その段階で医師に伝える必要があると判断いただいた場合には、薬剤師さんから都度迅速に、患者様がまだ薬局にいらっしゃる段階で電話でご連絡をいただいています。こうした連携が取れているおかげで、医院での診察時間は限られていますが、薬のチェックを当然行っていることに加え、薬局さんでの薬剤師によるダブルチェックが行われることで、患者さんにとって安全で適切な処方が実現できています。 この連携の中で、すみれ薬局さんからいただくフィードバックは、非常に良好で的確なものです。
- すみれ薬局ではお薬をお渡しする際に、こちらの薬歴やお薬手帳で確認している副作用歴、アレルギー歴、併用薬などを確認して、処方されたお薬を安全に服用していただけるか確認させていただいております。もし何か問題があった場合は、疑義照会という形で、すぐに電話で先生にお問い合わせさせていただいております。また、緊急性はないけれど、先生との情報共有が必要と判断される場合では、書面での情報提供で連携を取らせていただいている場合もございます。
最後に、患者さんへのメッセージを頂戴できればと思います。
- 当院では、内視鏡検査治療を大学病院レベル、がんセンターレベルでご提供させていただいているのですが、その要となるものが腸管洗浄であり、腸管前処置です。今、桑原薬剤師さんから説明があったように、フィードバックは書面での情報提供もありますが、例えば、先日洗浄がよろしくない場合に、トウモロコシやネギ、椎茸など色々なものが残っていることがあるのですが、後で確認すると、検査食を選択されなかった、という情報があります。そうすると、次の検査の時に質の高い検査をするために、今度は検査食を使ってみましょう、というような説明にもつながってきます。あるいは、連携が取れている特徴ですが、こちらから良かれと思って腸管洗浄剤を選択していただくわけですが、いざ薬局さんから説明を受けると、服用方法が複雑で分からない、という患者さんもいらっしゃいます。 そうした場合に、こちらがすみれ薬局さんからフィードバックいただいて、別のもう少し単純な腸管洗浄剤(例えばマグコロール)に変更したり、あるいはご家族を連れてきていただいたり、といったきめ細やかな体制でバックアップしていただいています。そのため、当院では安心して質の高い内視鏡検査を実現していただいています。 患者様には、現在非常に増えている大腸がんを早く見つけるためにも、当院ですみれ薬局さんのサポートをいただいている安全な状況で検査していますので、ぜひ受診していただければと思います。
- すみれ薬局ではお薬をお渡ししてから検査の前日まで、検査の準備についてのご質問を、お電話や対面でお受けさせていただいています。ご質問の内容によっては永田院長に改めてご質問いただくようお願いすることもありますが、お答えできることはしっかり対応させていただいておりますので、「これどうするんだっけ?」となってしまったら、お気軽にご相談ください。しっかりサポートさせていただきますので、ぜひ頼っていただけたらと思います。 よろしくお願いいたします。
